会社を辞めてやる!と思ったことは誰にでもあるでしょう。
こんな会社にはもういられないと思ったら、すぐにでも辞めたいものです。
ですが決意したその日、即日に退職することは果たして可能でしょうか?
事実上退職できるかという問題以外に、法律上の問題もあるので、簡単なことではありません。
ですが、上手く法律を利用すれば、退職届を提出してから、一度も会社に出勤せずに退職できる可能性もありますので、今すぐに会社を辞めたいという人はぜひ参考にして下さいね。
Contents
そもそも会社は何日前から退職できる?
現在では、生命の危機すら生じるようなブラック企業については、我慢したところでメリットはなく、辞めてしまっていいという価値観が普通になってきました。
ですがその日のうちに辞めることができるとは、普通には誰も思わないでしょう。
では、何日前からだったらいいのでしょうか?
会社の就業規則には30日前が多い
退職の申出をいつしたらいいのかについては、会社の就業規則の問題と、法律の問題とを考えなければなりません。
一般的に、会社の就業規則には「30日前に申し出る」と書かれているケースが多いはずです。
中には、「3か月前」など、極端に長い申し出期間が書かれている場合もあります。
法律では2週間前
法律ではどうでしょう。
労働基準法にはこの規定がないので、民法を参照します。
民法627条第1項にはこうあります。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:民法627条第1項
一般的に、雇用期間の定めのない正社員が辞める場合、いつでも「辞める」といって構わないのです。
そして、退職を申し出て2週間経てば、自動的に退職になります。
退職日を決めて申し出をした場合、14日前に申し出れば有効と考えられるわけです。
一般的には法律のほうが優先されるものですが、では「30日前」を定めた会社の規定がまったく無効になるかというと、そこまで断言するのは難しいところです。
裁判になった場合、民法に基づく主張が最終的には勝つだろうとしか言えません。
それでも、一刻も辞めたい人は、法律を優先しましょう。
即日退職は基本的にできない
「3か月前」などとあり得ない長さの日数が定められている就業規則については、その部分において無効と考えられるので、完全に無視してしまいましょう。
ただし、法律に乗っ取って申し出るとしても「14日前」が、最短で辞められる日ということになります。
ちなみに、雇用期間を定めた契約社員やパートについては、この民法の規定は適用されません。
ではどうなるかというと、原則ルールとしては、契約の節目、つまり更新時期を待ってそのタイミングで辞めるべきということになります。
ただし世間において、契約社員が契約期間の途中で辞めている例のほうがごく普通です。
実務としても、契約社員の契約期間にはさほど意味のないものが多いので、意味の薄い期間を理由として退職を断られる例は決して多くありません。
ブラック企業がこのようなケースでどう出てくるかという問題はあるものの、あまり雇用契約の期間を特別視することはないでしょう。
まずは正社員と同様に考えていいと考えられます。
即日に退職するには?
即日退職は、退職に至るまでの日数が法律上も制限されていますので、基本的にできません。
逆のケースですが、会社側が従業員を辞めさせる場合、即日で辞めてもらおうとするなら、原則として30日分の解雇予告手当が必要となります。
会社のほうは即日解雇のために金銭の支払いが求められているのに、従業員のほうはすぐ辞められるというのでは、バランスが悪すぎます。
日本の労働法においては、歴史的経緯で労働者が大きく保護されているのも事実ですが、だからといってどんなシーンでも労働者の自由がまかりとおるわけではありません。
では、即日退職が可能なのはどんな場合でしょう。
再度、会社側から辞めてもらう場合を考えてみます。
解雇予告手当の支払が必要な「解雇」という方法を採らず、会社から労働者に対して退職を勧めることがあります(退職勧奨)。
それに労働者が応じて自ら退職することを選択したのであれば、雇用関係は終了します。
労働者の自由意思が損なわれていないのなら、これは手当を支払わないための脱法行為というわけではありません。
これが有効なのは、双方の合意で雇用契約を終了しているからです。
ということは、労働者からの退職申出でのケースであっても、会社がそれに同意すれば、特に問題なく雇用契約が終了するわけです。
つまり、どうやって即日退職するかいうテーマは、「いかにして急な退職で会社の同意を引き出すか」に掛かっているということになります。
即日退職する際の注意点
ここからは、即日退職をする場合の注意点を上げていきますが、その前に、どうして就業規則には30日前に退職を申し出る義務が設けられているのでしょうか。
当然ながら、急に辞められたら、通常は困るからでしょう。
他の従業員に示しがつかないという理由もあります。
この規定がないと、失踪のような辞め方でもいいことになってしまいます。
ですが会社の側も、常に30日先まで働かせる必要があるわけではありません。
会社からしても、働かせるということは、賃金を支払う義務があるということです。
すでに勤労意欲を失っている従業員を無理に引き留めても、生産性は上がりません。
辞める従業員と会社との間で、利害を一致させれば退職することができるのです。
即日退職したい人は、利害を一致させるようにしていきましょう。
会社にとって用済みになっている
「用済み」などと言われたらいい気はしないでしょうが、即日で辞めたいときには、辞める側はそうなっていないといけないのです。
ブラック企業の特質は、従業員をしゃぶりつくすこと。
しゃぶりつくされている人には用はないので、早めにリリースしてもらいやすいでしょう。
そう思ってもらうためには、燃え尽きた様子を見せましょう。
引継ぎが済んでいる
人の入れ替わりが激しい会社の場合は、引継ぎはあまり意味がないことも多いです。
ですが、しばしば引き継ぎの有無は、会社側の嫌がらせの材料になるものです。
レアケースですが、「引継ぎをしないで会社を辞めた」ことで、損害賠償請求をしてくることも少なくはありません。
危ない会社だと思えば、常に現在の仕事について、まとめを残しておくことをおすすめします。
わかりやすく仕事のルールを残しておけば、客観的にもクレームは入れられません。
訴訟等、トラブルの要素がない
辞める従業員から逆襲される心配がない場合、会社側も即日で退職を認めやすいでしょう。
多少労働問題などトラブルを抱えた上での退職だとしても、即日での退職を認めることが口止めの意味を持つこともあり、そのような場合には比較的スムーズです。
即日退職できない場合の対処方法
会社は必ずしも合理的な判断を下すとは限りません。
即日退職を認めておくほうが賢い選択だという場合でも、あえてそうしないということもあります。
法律も無視し、感情のおもむくままに対決することを選んできたりもします。
そんな場合、次善の策を考えましょう。
有給休暇を使う
残っている有給休暇は、使用しない手はありません。
有給休暇を使用すれば、「退職届を出した翌日から出勤をやめて、30日後に退職する」ことができます。
1か月分の給与が余計にもらえるので、辞める側は得をします。
この方法を使うなら、引き継ぎが特にきちんとおこなわれている必要があります。
引継ぎと、退職の可否とは別の話なのですが、会社から損害賠償請求をされたときに、対応できないといけません。
会社としては、1か月分の給与を取り返したいと思うでしょう。
さて、有給休暇がある前提で、30日後に退職する具体的な方法です。
内容証明郵便を作り郵便局へ行く
すぐに内容証明郵便を作り、郵便局に行きましょう。
集配をおこなっている大きな郵便局に限られますのでご注意ください。
その代わり、「ゆうゆう窓口」があるので24時間提出できます。
内容証明郵便は、書式が決まっているので慣れないと面倒ですが、決まりを守っていれば問題ありません。
同じ書類を3部作る
同じものを3部作りましょう。
郵便の内容は、
- 就業規則に従って30日後に辞めること
- 翌日から有休を行使すること
です。
年次有給休暇は、出勤するカレンダーを見て、1日ずつ当てはめていきます。
土日祝日など、出勤予定のない日に充当してはいけません。
有休を一切認めていないようなブラック企業の場合でも、法律上の有休は誰でも持っています。
勤続6か月以上であれば、ほとんどの場合10日、勤続1年6か月以上であれば、合計21日の有休が残っている可能性があります。
21日あれば、ギリギリ30日後に設定した退職日に届くかもしれません。
もし有休が足りなければ、欠勤となりその日についての賃金はありません。
有休を使う場合、会社の許可が必要と思うかもしれません。
ですが会社は許可を出す権利はありません。
会社はあくまでも有休を別の時季にとるよう指示する権利しか持っていません。
辞めることが決まっている人の場合、「別の時季」はありません。
会社が有休行使を差し止めることはできないのです。
なお、争いを防ぐためには内容証明郵便が確実ですが、大変であればメールでもいいでしょう。
上司に対して以上の内容を、個人のアドレスからメールで送ります。
まとめ
法律上は、一方的な意思表示により、合法的に退職することはできません。
ですが、同意を得ればその限りではありません。
即日退職をするためには、なんとか同意を得ましょう。
相手に後ろめたい部分がある場合は、認められる可能性が高まります。