日常的に履歴書を書くことは多いものですが、退職願・退職届となるとはじめてと言う方や、なかなか上手い文章が思いつかない方も少なくはないかも知れません。
簡単な書き方としては「一身上の都合で退職」と言う文章がよく使われますが、この書き方には気をつけたいポイントがあったりもします。
このため、文章を考える前には、まずは正しい知識を確認しておくのがおすすめです。
この記事では、スムーズに退職するための注意点もチェックしつつ、すぐに使える文例も紹介していきますので、ぜひ参考にして下さいね。
Contents
退職理由を書く際の注意点
まずは、退職理由を書く際の注意点を見ておきましょう。
書き始める前の確認事項や言い回しについてなど、気をつけたいポイントが幾つかあります。
まずは自社の就業規則に必ず目を通す
従業員と会社の雇用契約においては、法律で決まっている部分もあれば、当事者同士で自由に決められる部分もあります。
就業規則は従業員と会社が、お互いの雇用契約について任意に定めたものですが、法律違反などでない限りは、この取り決めが効力を発揮する特徴があるのです。
これには色々な取り決めや規則が盛り込まれており、退社についても何らかのルールがあることが多いもの。
例えば、「退職願の提出は1ヶ月前に出すこと」と言うような取り決めがあるはずですので、これを確認してから、退社届・退社願を書いていくようにしましょう。
退職願・退職届・辞表の違いには要注意
退職の意思表示を行うためには、どんな書面を使うかが重要な注意点となってきます。
ぱっと思いつくものに
- 退職願
- 退職届
- 辞表
がありますが、実は、これらにはそれぞれ違った意味合いがあるので注意が欠かせません。
シチュエーションにあわせて、相応しいものを選んで下さい。
退職願とは
まだ退職が決定していない場面で使うのが退職願です。
会社の方に「退職したいので検討下さい」と意思表示する書面になります。
退職を願い出るだけの場面なので口頭でも構わないのですが、意思が固まっていることを示すためには書面にするのがおすすめです。
退職届とは
退職届とは、退職が決まった後、会社に対して届け出る書面です。
退職を願い出て交渉が成立すれば、その証明として退職届を出し、雇用契約の解除を確定させると言う流れです。
退職の決定を証拠に残すものになるので、書式などをしっかりとチェックしましょう。
辞表とは
間違ったテレビドラマなどでは、一般社員が退職する際に辞表を提出することもありますが、これは正しいものではありません。
辞表とは一般的に、代表取締役や執行役員などの役員が、辞任を申し出るためのものとなります。
したがって、雇用契約にある従業員が使用すると、少々恥ずかしい事態になりえるため要注意です。
退職届を出すべき場合とそうではない場合
退職届は、会社を辞める際に常に必要と言うわけではありません。
場合によっては出す必要がないのに、会社から請求されることもありえます。
不用意に退職届を出すと、自己都合の退職として扱われるために、失業給付金などの問題でデメリットが生じかねません。
解雇の場合は原則として出さない
解雇通告書を交付されるか、口頭で伝えられた時には退職届・退職願の適応範囲外です。
会社としては退職届をもらっておくと、不当解雇に関する訴訟のリスクを減らせるなどのメリットがあるため、要求してくることがあります。
このケースで提出を要求されても、出す義務はありません。
有期労働契約の満了の場合
一年間の労働契約を結んでいたのが、期間満了によって終了した時に、会社の方がそれを通知すると同時に退職届・退職願を要請してきた場合も、提出は不要です。
こちらは期限の到来によって自然退社となるケースのため、退職届を出すような手続きは基本的には必要ありません。
書面を出さなくても退職はできるが...
退職の際には、民法627条の規定が適用されます。
第627条
- 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
- 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
- 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない。
引用:wikibooks
これによると「期間の定めのない労働契約において、当事者は何時でも意思表示によって解除できる」となっています。
つまり、法律上は書面でないと駄目、と言った決まりはないことになります。
このために口頭でも退職をすることは可能ですが、やはり、何らかの形に残しておかないとリスクがあるため、書面の利用が一般的です。
口頭だけだと、どうしても「言った言わない」の水掛け論になったり、退社を伝えたタイミングを証明できない場合も出てきます。
なお、メールやLINEを使うケースも増えてきていますが、これらは他人による偽造の余地があるため、当事者が書いたとは認められない可能性ある点に要注意です。
結論としては、書面で証拠を残す方法が最も安全で確実と考えられるでしょう。
退職願・退職届に使うもの
まず、本文にはA4かB5の用紙を使うのが一般的です。
白の便箋で十分となります。
罫線が入ったものを使う場合には、ビジネス向きのシンプルなものを用いましょう。
これに本文を書き上げたら、白封筒におさめて提出します。
この白封筒には郵便枠の印刷がないものを選んで下さい。
なお、A4なら長形3号、B5なら長形4号がぴったりサイズとなります。
社会人としての常識ではありますが、手書きする時にはボールペンか万年筆を選びましょう。
鉛筆のような消せるものは相応しくありません。
一身上の都合を使う時の注意点
退職理由としては、実際に細かい部分に踏み込んで伝える必要はありません。
家庭の問題があった時や、社内での人間関係で困っていた場合でも、「一身上の都合」としておいて大丈夫です。
ただし、一身上の都合としてしまうと、自己都合での退職をしたことになるので、この点は要注意です。
会社の方の都合で退職する時には、「一身上の都合」は使わずに、「会社都合での退職」となります。
失業給付金の開始タイミングや給付期間が変わってくるなど、影響があるので気をつけておきましょう。
なお、会社の方は「一身上の都合」だけだと、良くわからないために詳しく聞きたがってくることがあります。
この場合、実際には会社の人間関係に疲れていたり、人事や評価に不満があっても、「家庭の事情」や「体調の問題」とすることで、追求をシャットアウトしている方は少なくはないようです。
正当な理由のある自己都合
一身上の都合と書くと、自己都合での退職と言うことになります。
しかし、場合によってはパワハラや、不当に窓際に追いやられてやむなく退社した場合もあるはずです。
このように自分の勝手で辞めたのではなく、自身の判断とは言え退職に正当な理由がある時には、退職届に「一身上の都合」とは書かないようにします。
近年ではパワハラが横行していますが、この場合には退職理由を空欄にしてしまうと良いでしょう。
もちろん、専門家に相談をしながら考えていくのが、ベストです。
会社が退職届を受理してくれない時の対策
特に退職推奨や、パワハラが原因で辞めるような場合には、会社の方で「一身上の都合にしてくれないと、退職届は受け取らない」と主張してくることがあります。
この場合は引き下がるのではなく、内容証明郵便を使いましょう。
内容証明郵便は法的な紛争で良く使われる存在で、「誰が誰に、いつ、どんな文書を送ったか」を証明できるのが特徴です。
内容証明とは
いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって当社が証明する制度です。
引用:日本郵政株式会社
これを使っておけば一方的に会社都合の退職届を送りつけても、その行為が正当と認められれば証拠になり得るわけです。
退職理由の書き方
それでは、いよいよ実際の退職理由の書き方を見ていくことにしましょう。
- 自己都合
- 期間満了
- 会社都合
の場合の3パターンに分けて、基本的な書き方を紹介しましょう。
自己都合の場合
退職届 私議
この度は一身上の都合にて、令和〇年〇月〇日をもちまして、退職させて頂きます。
令和〇年〇月〇日(提出日)
〇部〇課 自身の名前
〇某株式会社 代表取締役社長 〇某殿
期間満了の場合
退職届 私議
この度は、令和何年何月何日の労働契約期間満了をもちまして、当該労働契約を更新せずに退職させて頂くことに致します。
令和〇年〇月〇日(提出日)
〇部〇課 自身の名前
〇某株式会社 代表取締役社長 〇某殿
会社都合の場合
退職届 私議
この度は、貴社による退職推奨により、令和〇年〇月〇日をもちまして、退職させて頂くことに致します。
令和〇年〇月〇日(提出日)
〇部〇課 自身の名前
〇某株式会社 代表取締役社長 〇某殿
補足
テンプレート中の「私議」は「私事」にしても問題はありません。
提出するのは上司でも、宛名は社長や代表取締役を記します。
まとめ
退社届・退社願の書き方について色々な注意点とともに、テンプレートを紹介してきました。
退社届については、不当解雇について争う場合などにおいては特に、とても重要な証拠となりえる存在です。
このために、解雇なのに提出を求められた場合には、まずは応じないことが大切となります。
それでも押し切られたり、証拠を残すために必要なケースでは絶対に「一身上の都合」としないように気をつけて下さい。
解雇や退職推奨に伴う場合は、「会社都合」であることを主張することで、今後の失業給付金や転職の際にも影響が出てきます。
中々、スムーズに退職できないようなケースでは、社労士や弁護士に相談すると、有効な対策を考えてくれるはずです。
困った時には専門家のサポートも受けつつ、最良な選択肢を探していくようにしましょう。